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短くて密度の高い報道文は、少し補ってやらないとGoogle翻訳には難しい

仮想通貨の保有者の間で激震が走った、コインチェックの仮想通貨盗難事件。記者会見現場からはツイッターでリアルタイムな情報が入ってくるなど、事件の発端からニュースの拡散までが高度なテクノロジー社会を象徴するような事件です。

現場からの速報は簡潔が一番。そうした言葉たちを機械翻訳はどこまで理解できるのか、今回はビジネスインサイダー誌のツイートを元に調べてみます。

冒頭で書いたとおり、今回の原文はビジネスインサイダー誌のツイート。

コインチェック本社前の様子です。数時間前にビルのオーナーさんから「のちのち記者会見などが正式にある」ということで3階から外に出されたのですが、記者会見の時間・場所は現時点でわかりません。

外にいると、ちらほらと「カネ返せー!」の声が聞こえてきます。

580億円相当の仮想通貨流出事件を受け、コインチェックで行われた記者会見の直前の様子を報じたツイートです。短い文章からは現場の臨場感が伝わってきますね。

これをGoogle翻訳にかけてできた英文がこちら

It is the state before the coin check head office. A few hours ago, the owner of the building issued a letter from the 3rd floor saying “We are officially on press conference etc.”, but I do not know the time / place of the press conference at the moment.
When you are outside, you will hear the voice of “Money can return!”

次からは訳文のポイントを見ていきます。

issued a letter from the 3rd floor

これはおおよそ「ビルのオーナーさんから~ということで3階から外に出された」というあたりの訳でしょうか。この訳文では、ビルのオーナーさんが3階から何らかの書面(a letter)を発行した(issue)かのような書き方になっています

おそらく「のちのち記者会見などが正式にある」の部分が何らかの意味を持ってしまっているのかもしれません。カギ括弧内の部分はあくまで引用であり、前後の分には直接関わるものではないのですが、ここの単語を削ってみると文全体の構成が大きく変わってしまいます。

ここの箇所は、この文で言い表されている事柄が2つまぜこぜになっているのが問題です

まずはこの文のメッセージを紐解きましょう。まずはビルのオーナーが「のちのち記者会見などが正式にある」と伝えてきたこと。そしてビルのオーナーが、3階にいた記者含む人たちをそこから移動させ外に出したこと。最後に、記者会見の時間・場所が不明であること。この3つが言い表されています。

この英訳文では最初の2つが混ざってしまい、「3階にいた人たちを外に移動させた」ということが伝わっていません。読んで分かる英訳文の出力のためには、先述の3つのメッセージをうまく切り分ける必要があります。

一例として、このような文が考えられるでしょうか。「私たちはビルのオーナーさんから「のちのち記者会見などが正式にある」と伝えられ、3階からビル外に移動させられました。記者会見の時間、場所は現時点では不明です」とすれば、それなりに自然でわかりやすい英訳が出力されるはず。

ポイントは「私たち」という主語を補ったことと、「伝えた」というオーナーさんの動作を補ったことです。こうすれば誰が誰に何をしたのかが明確になり、Google翻訳にも読み取りやすくなります。

カネ返せー!

この訳は「Money can return!」という珍奇な訳。まるでお金が自分で勝手に動いて家にでも帰るかのような言い方ですし、「返せー!」という命令文のニュアンスもありません。

何かを戻してほしいのですから、ここで欲しい英文は「Get ~ back(~を戻す)」という表現を使った「Get our money back!」あるいはシンプルに「Refund!」(返金!)あたりでしょうか

手っ取り早い方法は傍線と!マークを消してしまうこと。「カネ返せ」だけにすれば「return money」という英文になり、表現は的確になります。傍線と!マークの両方を消してしまう理由は、傍線だけ消しても英訳は「Money can return」から変化がなく、!マークを消して傍線だけ残すと「Give me money」(金をくれ)という、トンチキな訳になるからです。

もう少し格好いい表現をさせたいのなら、改まった言葉を使うというテクニックが使えます。改まった言葉や難しい言い回しは、意味の幅が限定されているぶん訳文が安定するのです。試しにこの部分を「返金しろー!」と書き換えてみると果たせるかな「Refund!」という言葉が出力されました。1単語でスパッと言い切りたい人には、こちらの方法がピッタリでしょう。

これを踏まえて、ある程度ちゃんとした訳をGoogle翻訳にさせるためには、次のように書き換えるといいでしょう。

コインチェック本社正面の様子です。私たちはビルのオーナーさんから「のちのち記者会見などが正式にある」と伝えられ、3階からビル外に移動させられました。記者会見の時間、場所は現時点では不明です。

外にいると、ちらほらと「返金しろー!」の声が聞こえてきます。

細かいところで粗は残っているかもしれませんが、こう入力すれば少なくとも誰が何をしてどうなったか、その点は明快になっているはずです。

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