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他人の発言を伝えるときは、何よりも主語とその位置に注意!

他人のメッセージを取り次ぐ時は、どこまでが相手のメッセージでどこからがそうでないのか、極力誤解のないようにするのが肝要です。英語では特に、主語に気をつける必要があります。

今回扱う文章は、食事へのお誘い。ただし誘うのは自分以外の人です。誘う本人と「わたし」の発言がごちゃ混ぜにならないよう英訳するには、どうすればいいのでしょう?

今回の原文は、「今すぐ使える英語メール文例集」様より、こちらの文章。

ゲンズブール様

お世話になっております。

このたび私どものタイ支社の営業部長が来日致します。いつもお世話になっているゲンズブール様に会いたいと申しますので大変お忙しいとは思いますが食事会にご出席頂けませんでしょうか?

日程はまだ決まっておりませんが来月の最終週を予定しております。

お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。

 

それをGoogle翻訳で英訳した文章は以下の通り。

Dear Gensbourg,

We become indebted to.

The sales manager of our Thai branch office will visit Japan. I would like to see Gensbourg who is always indebted to me, so I think that he is very busy but would you mind attending the dinner party?

The schedule has not yet been decided but we are planning the last week of next month.

I am sorry to trouble you, but thank you.

それでは、訳文のポイントを見ていきましょう。

お世話になっております

Google翻訳文では「We become indebted to」。この表現は、「世話になる」という字義こそ合っているものの、実はビジネスメールの出だしに慣用的に書く「お世話になります」とは少しニュアンスが違います。

「indebted」という表現の細かい意味は「借金(負債)がある」あるいは「(助けてくれた人などに対して)借り(恩)がある」というもの。映画などで誰かに助けられた人が「世話になった」と言うときのアレです。「debt」という言葉はもともと「借金」を意味する単語なので、「何かしてもらったことがあり、それが負い目になっている」というニュアンスが含まれると思われます。

ビジネス上のあいさつの一環で使われる「お世話になります」にはここまでの重さはないでしょう。個々のケースを見れば可能性はゼロではありませんが、一般的には「普段から取引して頂いてありがとうございます」ぐらいの意味のはず。出典ページの対訳を見れば「Thank you for your continuous support as always」となっており、普段から継続的に(continuous ~ as always)支えてもらっている(your support)ことに感謝するという文面です。

これに近い訳文を出力させるには、「お世話になる」以外の言葉が必要です。多少改まった言い方になりますが「日頃からご愛顧いただきありがとうございます」と入力すると、対訳の英文と近い意味の「Thank you for your continued patronage」という訳文が出力されるので、このように書き換えるといいでしょう。改まった言い方というのは往々にして意味の幅が狭いものですが、それは解釈がぶれる余地が少ないということでもあります。日常の色々なシチュエーションで使える便利な言葉を訳すときは、その言葉がどのシチュエーションでどんな意味を表しているかを考え、それぞれの場合にのみ使われるような言葉に置き換えれば誤訳を減らすことができます。

いつもお世話になっているゲンズブール様に会いたいと申しますので~

これに対応する箇所は「I would like to see Gensbourg who is always indebted to me」となっています。ツッコミどころは主語の「I」と、「who is always indebted to me」。

まず、主語となるべきは「わたし(I)」ではなく、前述の文にある「営業部長(sales manager)」です。日本語の原文では「誰が」会いたいのかを明示しておらず前後関係から推測するしかないため、機械翻訳ではどうしても混乱が予想されます。このような場合は訳するにあたって「ゲンズブール様に会いたいと“彼が”申しますので」のように代名詞を補っておくと混乱のない訳文ができあがります

「who is always indebted to me」の方を見てみましょう。ここの「お世話になります」も上述の通り「日頃からひいきにしてもらっている」という意味なので、「indebted」以外の表現を考えるべきです。

加えてこの表現では、ゲンズブール氏が「わたし」に「indebted」つまり「借りがある」ことになってしまいます。この文の主語は本来営業部長であるべきはず。ということは会いたいと言っているのも、ゲンズブール氏にお世話になっているのも営業部長です。両方の動作が営業部長に関連づけられるよう、うまく代名詞を補う必要があります

出典ページの対訳を見ると、「いつもお世話になっているゲンズブール様に会いたい」という部分は「he want to see you as a business partner」となっています。文面に少し改変が加えられており、「ビジネスパートナーとして(ゲンズブール様に)会いたい」という意味になっています。とりあえずこれを模範例として、どうすればこれに近い英訳が出てくるかを考えてみましょう。

「as a business partner」は直訳調に「ビジネスパートナーとして(ゲンズブール様に会いたい)」とすれば素直に模範例通りになってくれます。少しややこしいのは主語として挿入する「彼が」の位置。「大変お忙しいとは思いますが」を文章のどこに配置するかで読み取られ方が変わってくるので、少し工夫が必要です。

例として「彼がビジネスパートナーとしてゲンズブール様に会いたいと申しますので、あなたがお忙しいことはわかってはおりますが、食事会へのご出席は可能でしょうか?」とした場合、「Since he would like to see Gensbourg as a business partner, I know that you are busy, can you attend the dinner party?」という英訳文が出力されます。これは「He(彼/営業部長)」がビジネスパートナーとして会いたい旨を伝え、先方の多忙に配慮し、食事会への出席が可能かを尋ねるという要素が揃ってはいます。しかし、「あなたがお忙しいことはわかってはおりますが(I know that you are busy)」の部分の挿入の仕方が唐突なのが気になります。接続詞も何も使わずコンマ区切りで文の途中にポンと置かれているので、もう少しなんとかしたいところ。

そこで問題の箇所を文頭に持ってきます。「あなたはお忙しいこととわかってはおりますが、彼がビジネスパートナーとしてゲンズブール様に会いたいと申しますので、食事会へのご出席は可能でしょうか?」とすれば「I understand that you are busy, but I would like to see Gensbourg as a business partner, so can you attend the dinner party?」となり、文節同士がちゃんと「but」や「as」などの接続詞で結ばれるようになりました。しかし同時に、ゲンズブール氏に会いたいのは「わたし(I)」ということになってしまいます。

最後に、「ビジネスパートナーとしてゲンズブール様に会いたいと彼が申しますので」と直しましょう。これで忙しいであろう先方を「わたし」が慮り、「彼(営業部長)が会いたがっている」ことを伝え、食事会に誘うという役目を果たす訳文が完成しました。

ちなみに出典ページの対訳を見ると、この文は2つの文章に解体されています。一方は営業部長が会いたい旨を伝え、もう一方が「お忙しいでしょうが食事会にご出席頂けませんでしょうか」と伝えるよう区切られています。長い文章は細かく分ければそれだけ混乱が減るので、これはうまい訳しかたです。

日本語としては不自然になりますが、文中に「彼が」「彼女が」という代名詞を補ってやるだけで、見違えるほどわかりやすい英訳文ができるのです。

英訳するときに限らず、普段の日本語を書く際にも、「誰が」を意識して書いてみるとより伝わりやすくなるかもしれませんね。

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