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「○○ is ~」という文章、あなたは本当に訳せていますか?

「○○ is ~」という文章は、英語の初心者が最初に触れる文章のかたちのはず。ある程度勉強した人なら、見飽きるほど見ていることでしょう。

今回扱う文章はこの形式が重要になってきます。決まり切った形の文章を、柔軟な日本語に訳すにはどうすればいいか、Google翻訳の例を見ながら考えていきましょう。

今回の原文は、Wikiquoteより以下の文章。

If A is success in life, then A = x + y + z. Work is x, play is y and z is keeping your mouth shut.

この言葉は、20世紀最高の物理学者と謳われたアルバート・アインシュタインが人生の成功について語った言葉です。人生における成功という通俗的なトピックを計算式の形で表現したところが理論物理学者としての彼の性格を表しています。

これをGoogle翻訳にかけたのが以下の訳文。

Aが人生で成功すれば、A = x + y + z。 仕事はx、遊びはy、zはあなたの口を閉め続けています。

それでは、訳文のポイントを見ていきましょう。

if A is success in life

Google翻訳の訳文は「Aが人生で成功すれば」という訳文。この訳はあたかも「If A succeeds in his life」という英文を訳したかのようになっています。しかしここは「A」すなわち「success」である、要は「Aは人生における成功である」と言っている文章です

ここで止まらず、前後関係を見た上でもう少し突っ込んでみましょう。この直後にはA = x + y + zという等式が出てきています。式中の「A」は、ここで「success」であると明示された「A」です。するとこの文章は、ちょうど代数の計算の問題文のようになっているのです

代数の式は、具体的な数字を記号で置き換えて表現するもの。式の中に出てくる文字は、今現在具体的な数字がわからないために、一時的に数字の代わりに使われるものです。この文章の場合、「人生における成功」を一時的に「A」として置き換えているので、「Aがつねに人生における成功である」ように聞こえる「~は○○である」という表現では不自然になってしまいます。

一時的に、あるいは仮に置き換える、というニュアンスを出すのがこの場合は適切だと考えられます。そうなると、例えば、「Aを人生の成功とおくならば」あるいは「人生の成功をAと表すならば」という訳にするのがよいでしょう。

z is keeping your mouth shut

Google翻訳の訳文は「zはあなたの口を閉め続けています」。これはまるでzを主語とした動詞のようですが、実際のところこれは動名詞の用法で解されるべきものでしょう

動名詞とは、動詞を現在進行形にすることで名詞の形で使うという用法です。日本語で言えば「~すること」という表現に相当するもので、この文章に出てくる「keeping your mouth shut」は「口を閉ざし続けること(=語らないこと)」と訳されます。

とはいえこの文章の場合、形式だけを見ると「zはあなたの口を閉め続けています」という意味であってもおかしくはない表現です。これを動名詞の表現であると解するべき理由はどこにあるのでしょう?

それについては前後関係を見るしかありません。この文章の後半部分は、A = x + y + zという等式のxとyとzがそれぞれ何に相当するかが語られています。x、y、zのいずれも何かの対象を記号で置き換えて表現したものなので、ここで語られるのはそれぞれの記号と名詞の対応関係となります。なので必然的に「z is ~」の「~」の部分は、何らかの名詞が当てはまるはずだ、という推論が成り立ち、この「keeping~」は現在進行形の動作ではなく動名詞と解釈するべきだとわかるのです。

なのでこれを日本語に訳すとすれば、「zは口を閉ざすことだ」という訳が適当でしょう。

これらを踏まえると、より適格だと思われる訳は以下のようになるでしょう。

人生における成功をAと表すと、A = x + y + zという式が成り立つ。xは仕事、yは遊び、そしてzは、口を閉ざして語らないことに相当する。

「○○ is ~」という形式の文章は、英語を学ぶとき最初に習う基礎の基礎。しかしそんな基本の形式にも、このように変則的な訳が必要になる場合があるのです。決まり切った形の文法を柔軟に訳するのは時によって勇気がいることですが、どうすればよりわかりやすくなるか、伝わりやすくなるかを常に考えることが重要です。

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