誠に勝手ながら更新を続けている本ブログもはや3ヶ月目に入ろうとしています。
今回の主題はこの「誠に勝手ながら」という言い回し。これはつまり何を伝えようとしているのか、英語で表現しようとするとどうなるのか?
Google翻訳の訳文を手がかりに探っていきましょう。
今回の原文は、PHP文庫『そのまま使える! ビジネスメール英文集』より以下の文章。
勝手ながら、下記の期間は全社夏期休暇とさせていただきますので、ご承知おきください。
これをGoogle翻訳にかけたのが以下の訳文です。
Without permission, the following period will be a company-wide summer vacation, so please be aware.
この訳文はどんな出来になっているのでしょうか?
以下から訳文のポイントを見ていきましょう。
この文書で伝えるべき用件
まずは、この文書で伝えるべき用件を洗い出してみましょう。まずは「全社夏期休暇を取る」旨。もうひとつは、休暇の期間をこの文章の後に記していること。最後に、こちらの都合で休暇を取ることになるが、そのことについて理解してほしい、あるいは許してほしい、ということです。最初の一つは全体のメッセージから、2つ目は「下記の期間は」という文面から明らかです。
最後の一つは少し曖昧ですが、文頭の「勝手ながら」という言葉からある程度読み取れます。ここでいう「勝手ながら」は、こちらが自分の都合で動いているという事実だけを述べるものでなく、こちらの都合でこうさせていただくことをご了承ください、という意味まで含めたものと考えられます。ですので、ここの「勝手ながら」は「ご了承ください」あるいは「こちらの都合で休暇を取ったことをお詫びする」という意味の英文に訳すのがいいでしょう。
下記の期間は全社夏期休暇とさせていただきます
まずは、伝えるべきメッセージが2つ入ったこの箇所をいっぺんに見てみましょう。
ここの訳文は「the following period will be a company-wide summer vacation」となっています。
これは適格な訳だと言えるでしょう。「The following period」が「下記の期間」を、「will be a company-wide summer vacation」で「全社夏期休暇」を表しており、「is」で結ぶことで「下に表記のある期間中は夏期休暇です」ということがわかります。
ちなみに、出典の書籍に載っている対訳は「Our office will be closed during the following company-wide summer vacation period」となっています。Google翻訳との文の構造の違いを際立たせて訳すなら、「下記に挙げる全社夏期休暇期間の間、オフィスは開いていません」となるでしょうか。「以下の夏期休暇期間」のようにふたつのメッセージを合わせた言い方をして、その上で「オフィスは開いていません(=会社は休業します)」という文節を添えた形になっています。
こちらの表現にしたい!という場合には、「下記の全社夏季休暇期間の間、オフィスは閉鎖させていただきます」という文章を入力してみましょう。「The office will be closed during the whole company summer vacation period below.」という、かなり近い訳文が出力されます。
勝手ながら
この訳は「Without permission」となっています。「勝手」を「許可なく」と解釈したのであれば問題ない訳なのですが、これだけだと「ご了承ください」あるいは「申し訳ありません」というニュアンスがありません。ここはもう一言付け加えたいところ。
出典となった書籍では、休暇期間に休業するという旨の文章を書いた後に「We apologize for any inconvenience」の一文を添えるという構成の対訳が紹介されています。これは「ご不便をおかけして申し訳ありません」と言いたいときの一般的な言い方。この日本語文をそのままGoogle翻訳に入力すれば出力されます。非常にシンプル。
お詫びの連絡などで半ば定型句のように使われる「勝手ながら」。しかしあえて書き添えるということは何らか意味を持つということで、それを別の言葉に訳そうとすると深く深く意味を掘り下げる必要があるものです。