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Google翻訳が拾い損ねた「so that」の意味とは?

最初はとっつきづらくても、馴染めば便利に使えるとわかる表現というものがあります。私にとっては「~のために」のように目的を表す「so that」がそれでした。

しかし馴染んだ表現こそ要注意。目的を表す意味で使われることが多い「so that」には、他の意味もいくつかあって、訳する際には注意すべき場面があります。

今回は、そのようなケースを取り扱ってみましょう。

今回の原文は、Wikiquoteより以下の文章

But what is history, Don Ferrante would often say, without politics? A guide who walks on and on with no one following to learn the road, so that his every step is wasted; just as politics without history is like a man who walks along without a guide.

これは、18~19世紀にかけて活躍したイタリアの作家アレッサンドロ・マンゾーニの言葉です。イタリアではよく知られた作家で、彼の代表作である『いいなづけ』は、イタリアではダンテの『神曲』と並ぶ国民的文学作品として親しまれているとか。

これをGoogle翻訳にかけたのが以下の訳文。

しかし、歴史は何ですか、ドン・フェランテは政治がないとよく言いますか? 彼の歩みが無駄になるように、道路を学ぶために誰も追随しないで歩いていくガイド。 歴史のない政治は、ガイドなしで歩く男のようなものです。

それでは、訳文のポイントを見ていきましょう。

What is history…without politics

Google翻訳の訳文では「しかし、歴史は何ですか、ドン・フェランテは政治がないとよく言いますか?」という支離滅裂な訳。こうなった原因の多くは、コンマで挟まれた「Don Ferrante would often say」というフレーズでしょう。

本来この部分は、ドン・フェランテの発言の引用だと提示した上で「what is history without politics?」という言葉を挙げた文章。引用文の内容を訳すとしたら「政治のない歴史とはなんだろうか?」という問いかけになります。

この文中にはこの内容に加え、「ドン・フェランテが過去にこのような発言をしていた」という2つのメッセージがあるのですが、ドン・フェランテのくだりがコンマ区切りで途中に挿入されたため、両者の意味がごちゃまぜになった結果このような誤訳になったのだと思われます

とはいえこのように、発言の内容を途中で区切って「~が語った」という地の文を差し挟む書き方は英語ではよく行われます。この文章では全て地の文として扱われますが、大抵は引用符で囲まれているため、どれが発言内容なのかがわかりやすくなっています。

本来であればどう訳すべきなのでしょう?

一例として、次のような訳が挙げられるでしょう。

「ドン・フェランテが以前よくこう言っていた。歴史から政治を取っ払うとどうなるか?」

so that his every step is wasted

ここは「彼の歩みが無駄になるように」と訳されています。これでは、わざわざ無駄足を踏むために何かをしているように聞こえてしまいます。もちろん、不自然きわまるこの訳は誤訳と言っていいでしょう。

ここを読み解く鍵になるのは「so that」の構文。これは「~するために」のように、何らかの目的を表す表現としてよく使われます。しかし「so that」には他にも異なる意味が複数あるもので、一律に「~するために」と訳せるわけではありません。

この文中の「so that」は、原因と結果を表すために使われたものと考えられます。因果関係を表す場合には通常「so that」の直前にコンマが配置され、一文が2つに区切られます。今回の原文もそのように区切られており、さらに目的の意味で解釈すると文意が不自然になってしまうため、これは因果関係を表すため使ったものと考えていいでしょう。

では、その前提でこの箇所を訳するとどうなるでしょう?

この文章の場合、原因を示すのは「A guide ~ learn the road」の部分です。そして、その結果として「so that」以降の部分が続いてきます

前半部分は「道を知ろうとして後に続く者がいないまま前進していく案内人」と訳せるでしょう。道案内人が自分一人で道を歩んでいってしまう、その結果として「so that」以下、つまり「(他に誰も道を学べないため)その歩みが全て無駄になってしまう」という事態が発生します。

合わせて訳するとこのようになるでしょうか。

「道を学ぼうとして後に続く人がいないまま歩き続けてしまい、その結果歩みを全て無駄にしてしまう道案内人」

just as

この部分のニュアンスはGoogle翻訳文に反映されてはいません。字義通りに訳すのなら、これは「ちょうど~のように」のような意味となります。この前にあるものとこの後に続くものを比較し、両者の類似点を強調するような言い方ですね。

ところがこの文章の場合は、少し考え方を変える必要があるかもしれません。
この文章に出てくる比較対象は「政治なき歴史」と「歴史なき政治」です。両者は概念こそまったく異なるものですが、文字の上ではただ語順が逆になっているだけ。その点で両者は対称的な言葉と言えます。

すると、この「just as」を「ちょうど~のように」と訳すだけでは不自然になってしまいます。文章の前後関係、そして比較対象となる両者の関係性を考えると、これは「対して」や「一方」のように、対称関係を強調するような言い方の方がいいように思われます

これらを踏まえて全体を訳してみると、以下のようになるでしょうか。

「ドン・フェランテがよくこう言っていた。歴史から政治を取っ払うとどうなるか? それはちょうど、道を学ぼうと後に続く者がいないまま歩き続け、結果その歩みを全て無駄にしてしまう道案内人のようなものになる。対して歴史なき政治は、案内人なしで道を行く人のようなものだ」

原因と結果を表すための「so that」は省略されて「so」だけで使われる場合がほとんどだとか。しかしこのように、本来の形で使われた場合でも、形式と文脈に注意した上で適切な意味を読み取ることが肝心です。

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