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飛行機は限りなくUFOに近い?Google翻訳の謎基準を分析

もしも空飛ぶ円盤、いわゆるUFOと飛行機を混同してしまったなら、航空業界から軍事、宇宙観測、果てはオカルト研究や陰謀論まで何もかもごちゃ混ぜの大混乱に陥るに違いありません。

今のところそのような事態は起きていません。Google翻訳のウインドウ上を除いては。

今回の原文は、Wikiquoteより以下の文章

Don’t you believe in flying saucers, they ask me? Don’t you believe in telepathy? — in ancient astronauts? — in the Bermuda triangle? — in life after death?

No, I reply. No, no, no, no, and again no.

One person recently, goaded into desperation by the litany of unrelieved negation, burst out “Don’t you believe in anything?”

“Yes”, I said. “I believe in evidence. I believe in observation, measurement, and reasoning, confirmed by independent observers. I’ll believe anything, no matter how wild and ridiculous, if there is evidence for it. The wilder and more ridiculous something is, however, the firmer and more solid the evidence will have to be.”

これはロボット3原則で知られる20世紀の名高いSF作家、アイザック・アシモフのエッセイにある一節。オカルト的なものを否定し続けるアシモフが、何かを信じるに際しての証拠の重要性を説いた言葉です。

これをGoogle翻訳にかけたのが以下の訳文。

あなたは飛行機を信じていない、彼らは私に尋ねる? あなたはテレパシーを信じていませんか? – 古代の宇宙飛行士? – バミューダの三角形の中に? – 死後の人生で?

いいえ、私は答えます。 いいえ、いや、いや、いや、もう一度いいえ。

最近、一人は、不安定な否定の念によって絶望に追い込まれ、「何も信じていないの?

“はい”、私は言った。 「私は証拠を信じている。私は独立した観察者によって確認された観察、測定、推論を信じている。それが証拠があれば、何となくばかげて信じられないだろう。 よりしっかりした、よりしっかりした証拠がなければならない」

それでは、訳文のポイントを見ていきましょう。

Flying saucers

この2単語の訳はなぜか「飛行機」。空を飛ぶ物という意味ではそうなのですが、これは本来「空飛ぶ円盤」を意味する表現。まったく似て非なるものです。

「flying saucers」を単独でGoogle翻訳にかければちゃんと「空飛ぶ円盤」と出力されます。ところがこの文章のように、主語と動詞が存在する能動文に組み込まれるとどうやら訳語がおかしくなる様子。例えば、これを断定する形に変えた「You believe in flying saucer」は「あなたは飛んで皿を信じる」となり、「flying saucer」を主語に据えた「flying saucer flies」は「フラワーソーセージは飛ぶ」という珍妙な訳になってしまいます。

これが「flying saucer was seen」のようにbe動詞が入った受動文になると、ちゃんと「空飛ぶ円盤」と訳されます。

Google翻訳的には、空飛ぶ円盤とbe動詞は親和性が高いのでしょうか

and again no

Google翻訳は直訳調の「もう一度いいえ」。

これは何度同じ事を尋ねられてもその都度NOと答え続ける、ということをくだけた感じで表現した一言です。直前に「no」を連呼して、最後だけ「and again no」と少し言い方を変えることで印象に残る言い方に仕立てています

こういう言い方をした理由としては、頑とした拒否の意思を最後の「and again」で強調していると考えられます。日本語訳をする時にもそれを意識した上で、はっきりした意思が伝わるようすとんと訳したいところ。

色々な訳し方があることでしょうが、私が考えつくのは「何度言われてもノー」という訳です。

I’ll believe anything, no matter how wild and ridiculous, if there is evidence for it.

これはGoogle翻訳で「それが証拠があれば、何となくばかげて信じられないだろう。」と訳されている箇所です。ちぐはぐな言葉遣いは、いかにも誤訳が隠れていそうな一文ですね。

ここで本来本来言われていることは「どれほど突飛でばかげたことであっても、根拠があればどんなものでも私は信じる」ということ。I’ll believe anythingが「私はなんでも信じる」に対応します。その後の「no matter how wild and ridiculous」は「anything」の内容について記述する箇所で、「それ(=anything)がどれほど突飛でばかげていようとも」という意味。最後の「if there is anything for it」は「その根拠があるならば」という条件を言い表しています。

ここの「it」は、信じる対象である「anything」に対応しています。本来の意味がGoogle翻訳と正反対であることに注意してください。この理由として考えられるのは、no matter~の文節で主語と動詞が省略されている点です

「No matter~」という表現には、通常主語と動詞を書き添えます。例えば「空がどんなに暗くても」と言いたい時には「No matter how dark the sky is」という風に、文節の最後に主語と動詞を配置するのが本来の形式なのです。

なのでこの文章の場合も本来主語とbe動詞をつけて、「no matter how wild and ridiculous it is」となるべきなのです。主語が「it」なのは、「wild and ridiculous」なのは文頭に出てきた「anything」であるため。「anything」は単数形として扱われるため、その代名詞として使われるのは「it」となります。

試しに主語と動詞を補った「I’ll believe anything, no matter how wild and ridiculous it is, if there is evidence for it.」という文章を訳させると、「私は何かを信じます、もしそれが証拠があれば、それはどれほど野生でばかげていても。」という訳文が出力されます。倒置法のせいで少し意味を掴みづらいですが、信じるのが「何でも」でなく「何か」になっている以外は本来意図した訳ができあがっていることを確認してください。

最後にもう一手間、文節の前後を入れ替えて、「no matter how wild and ridiculous it is, I’ll believe anything, if there is evidence for it.」という文を入力してみましょう。こうすれば「何か」がちゃんと「何でも」に直され、ようやく本来の意味を反映した訳文ができあがります。

これらを踏まえて、より適当だと思われる訳を一例として書いておきます。

人がこう訊いてくる。空飛ぶ円盤を信じるか? テレパシーを信じるか? 古代宇宙飛行士説は? バミューダトライアングルは? 死後の世界は?
答えはノーだ。ノー、ノー、ノー、ノー、何度言われてもノー。
最近ある人が、あまりにしつこく否定されるのでむきになってこう言った。「あなたは何か信じるものがあるのですか?」
私はこう答えた。「イエス。私は証拠を信じる。独立した観察者による裏付けのある観察と、測定と、推論を信じる。どれほど突飛でばかげたものであっても、証拠があるなら何だって信じよう。とはいえ、突飛でばかげたものであればあるだけ、より確たる証拠が求められる」

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