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「so that」の和訳文は前後関係を要チェック

今回の記事でフォーカスする表現は「so that」。個人的にはなかなか直感的に認識しづらい、ちょっと苦手な表現です。

意味はおおまかに2通り。

目的: 「(文節1) so that(文節2)」という形の場合、文節2で表されることが起こることが文節1の目的であることを表す。「文節2」するため「文節1」を行う、というように訳されることがある。

結果: 「(文節1), so that(文節2)」という形の場合、文節1が起こった結果として文節2が起こることを表す文章になる。「文節1」になったので「文節2」という結果になった、というように訳される。

見分けるポイントはコンマで区切られているかどうかです。「so that」の直前がコンマで区切られている場合は結果を表す意味で、区切られていない場合は目的を表す意味で使われることが一般的です。人間であればすぐ読み取れるようなシンプルな規則ですが、Google翻訳の精度はどうなっているでしょうか?

1文目

The class which has the means of material production at its disposal has control over the means of mental production, so that in consequence the ideas of those who lack the means of mental production are, in general, subject to it.

Google翻訳文: 処分時に物質的生産手段を持つ授業は、精神生産の手段を支配するので、結果として、精神的生産手段を欠いている人々の考え方は、一般的にはそれに左右される。

カール・マルクス、『ドイツ・イデオロギー』

物質的生産手段を保有する階級は、知的生産の手段も有している、であるから結果として、知的生産の手段を有していない人々の考えは、一般的にその知的生産手段の影響を受ける、ということを説いています。

かなり持って回った言い方ですが、要は社会主義でいう資本家はモノの生産手段だけでなく、一般大衆の考え方にまで大きな影響力を振るうということ。この文章は資本主義社会を分析し、社会主義を構築したカール・マルクスが書いたものですが、資本家の影響力の強さを広い視野から考察していることがうかがえます。

さて、Google翻訳の訳文の出来はどうでしょう。コンマで区切られているということは、これは単なる結果を表す「so that」、つまり因果関係の流れは「so that以前」→「so that」以後となります

訳文で対応する箇所は「精神生産の手段を支配するので」という訳文。まず資本家が「mental production」の方法を持っているから人々の思考に影響力を持つ、という旨の文章になっていることがわかります。因果関係を正確に把握しつつ読みやすくまとまった、機械翻訳にしてはレベルの高い訳ではないでしょうか。

この文章は関係代名詞節を複数持つかなり長い文ですが、その文の構造を的確に汲めているのは素晴らしいです。とはいえ、「at disposal(好きにできる)」を「処分時に」としてしまっているのは玉に瑕といったところでしょう。

2文目

It’s easy to understand that we might want to have more life, more of the things it contains, so that we see death as a negative evil

私たちが死を悪魔と見なすためには、より多くの人生、より多くのものが含まれることを望むかもしれないということを理解することは容易です。

Thomas Nagel, What Does It All Mean?: A Very Short Introduction to Philosophy(1987), Ch. 9. Death

2文目は死について語られるこの一節。「so that」が一旦コンマで区切られている点を見ると、これは結果を表す意味。すると因果関係は「so that」以前→「so that」以後という流れです。

それに従えばこの文章は、人が「もっと長生きしたい(want to have more life)」と思うことから結果として「死を否定すべき悪とみなす(we see death as a negative evil)」のだと読めます。

しかしGoogle翻訳は、この「so that」を目的の意味で解釈しています。こうなると因果関係は逆転してしまいますが、その場合、「死を悪とみなす」という目的が先にあり、その手段として「長生きしたい」と望むことになってしまいます。

明らかに理にかなっていないこの解釈は誤訳だと判断していいでしょう。コンマで区切られているにも関わらず、Google翻訳はこの「so that」が目的を表すものと解釈しています。この誤訳はなぜ起きたのでしょうか?

この文章は、文の真ん中にコンマで両端を区切られた「more of the things it contains」という文節があります。鍵となるのはこの部分でしょう

この文節は直前の「より長い人生を求める(want to have more life)」という内容を補足するような形で挿入されており、この箇所を訳するとしたら「より長い人生を、(ひいては)人生から得られるものをより多く求める」という文章になります。

このような補足の文節は、取り除いたとしても全体として文法構造は崩れません。例えばこの文章であれば問題の文節を取り除いても「we might want to have more life, so that we see death as a negative evil(より長い人生を求めるので、結果として死を否定すべき悪とみなす)」となり、意味も文法構造も変わることはありません。

Google翻訳もその点は承知していたのでしょう。だからこそ、「so that」の直前のコンマを単に文節を区切るだけのコンマだと誤認してしまい、「so that」の意味に影響を与えるものと判断しなかったのだと思います。そのため、ここの「so that」をコンマなし、つまり目的を表す意味として訳したのでしょう。

3文目

For civil and some scientific purposes, we want to know the time of day so that we can order events in sequence.

市民や科学的な目的のために、私たちは日々の出来事を知りたいので、イベントを順番に並べることができます。

出展: wikiquote

この文章における「so that」は目的を表します。ということは因果の流れは後ろ→前、つまり出来事を順序立てたい(order events in sequence)という目的があって、そのために時刻を知りたがる、ということを言っている。

訳はどうでしょう。「日々の出来事を知りたいので、イベントを順番に並べることができる」となっていますが、とても意味不明

まず知りたいのは「日々の出来事」ではなく「time of day(時刻)」です。動詞の目的語がなぜか取り違えられている点で誤訳ひとつ。

もう一つは「so that」の意味の取り違えです。この訳文はまるで「日々の出来事を知る」ために「イベントを順番に並べる」という順序であるように書いていますが、これでは因果関係があべこべになっていることがわかります。

4文目

Natasha has just come up to the window from the courtyard and opened it wider so that the air may enter more freely into my room.

Natashaはちょうど中庭から窓まで出てきて、それを広げて空気が私の部屋にもっと自由に入るようにしました。

Leon Trotsky, Trotsky’s Testament (27 February 1940).

出展: wikiquote

この文章の「so that」が表すのは目的です。風通しを良くしたい(the air may enter more freely into my room)という目的があって窓を開けたということを伝える文章というわけ。

「~するようにしました」と訳してあるこの訳文は、「so that」を問題なく解釈できているといえるでしょう。別の部分の訳で気になる箇所があるとはいえ、「so that」についてはOKです。

複数の文章をGoogle翻訳に訳させた結果を見ると、基本的に「so that」の意味は解釈できていても、2通りの意味のどちらを反映させるか、という点については少し心配が残るという印象です。和訳文を見た時に少し怪しいなと思ったら、念のため前後の因果関係を入れ替えた場合の意味を考えてみたほうがいいでしょう。

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