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「しわ寄せ」を無視して訳すGoogle翻訳への対策

今回の記事では「しわ寄せが来る」という表現にフォーカスし、Google翻訳での英訳の精度を調べていきます。

複数の文章を英訳させ、その文章をチェックしていく中で、「しわ寄せ」という言葉は訳を間違えるどころか、そもそもGoogle翻訳は読み取らない場合が多いという傾向が見えてきます。

「しわ寄せ」という言葉の辞書的意味は

あることの結果生じた無理や矛盾を、他の部分に押しつけること。また、その押しつけられた無理や矛盾

と定義されています。

英語で対応する言葉はなんでしょうか?

こちらの記事によれば、「negative effect(マイナスの影響)」、あるいは「take a toll(不利益を被る)」などの表現が使えるとされています。

Google翻訳はどう訳してくれるのでしょうか?

それぞれの文章と訳文を見ていきましょう。

1文目

原文: 産業能率大学の調査によると、現役の課長の約半数は出世を望んでいない。そんな課長たちは「プレーヤーの立場に戻りたい」「現在のポジションを維持したい」と答えているという。企業の中枢を担う課長たちは、なぜそう考えるようになったのか。その背景には「働き方改革」のしわ寄せが影響している--。

Google翻訳英訳文: According to a survey conducted by the Industrial Efficiency University, about half of the active section managers do not want to get up. Such section chiefs said that they wanted to return to the position of the player, “I want to maintain the current position.” Why did the section chiefs responsible for the company’s heads think so? The background of that is influenced by the “reform of working way” -.

出典: SankeiBiz

太字の部分は原文と訳文で対応している箇所を示しています。

「その背景には「働き方改革」のしわ寄せが影響している--。」の英訳文は、日本語に訳し直すとちょうど「その背景は、働き方改革の影響を受けている」という文章になっています。「しわ寄せ」が「negative effect」と訳されたのならば文中に出てくるはずですが、英訳文にはそれが見当たりません

おそらく「しわ寄せ」という単語は、英訳文に反映されていないと考えられます。しかしこの英訳文からは、「働き方改革の影響が存在する」という文意はちゃんと伝わってきます。

となると、そもそもこの文章から「しわ寄せ」という単語を取り除いても問題はなさそうです。「その背景には働き方改革が影響している」としても言わんとすることは伝わるので、ここの「しわ寄せ」は単に「effect」あるいは「influence」という語で問題ないように思えます。

原文そのままの表現でもある程度伝わるはずですし、一例として「その背景として、「働き方改革」の影響が存在する。」という入力で出てくる「As a background to this, there is the influence of “how to work”.」という訳文でも言わんとすることは伝わると思います。

2文目

原文: 保護者はもっと、「先生たちが労働時間を守ることを応援します」と声に出し、先生たちや教育委員会、周囲の保護者などに、伝えていけるとよいのかもしれません。このままでは、結局のところ、しわ寄せは子どもたちに向かいます

Google翻訳文: Parents may further say, “I will support the teachers to keep working hours,” to say more, and to tell the teachers, the board of education, the surrounding guardians, etc. In this way, eventually, we will head for children.
出典: Yahooニュース

この文章でもどうやら「しわ寄せ」が抜け落ちたまま訳されたようです

結果として訳文は「we will head for children(私たちが子供のところに向かう)」となってしまい、原文の意図を反映できてはいません

この文章では1文目のように「しわ寄せ」を無視したまま訳をすることはできません。「しわ寄せ」が抜け落ちた一方で「来る」という語は残り、それが「head for」と訳されるので、原文の伝えたい意味を伝えるためには文章の書き換えが必要です

この場合、伝えたいのは「結果的に子供たちが悪影響を被る」ということです。この文章をそのまま訳させると「As a result, children are adversely affected」という英訳文になります。「adversely affected」は最初に紹介した「negative effect」と同義で、「マイナスの影響を受ける」という意味です。

この他、「bear the burden(重荷を背負う)」という表現も使えるでしょう。こちらの表現を使う場合は例えば、「結果として、重荷を背負うのは子供達となるのである。」という文章を訳させると出てくる「As a result, it is the children who carry the burden.」が使えるはずです。

3文目

原文: 育休や子育て支援制度を利用する社員が増えることで、残る社員たちにしわ寄せがくる事態は、一般に「逆マタハラ」と言われる。

Google翻訳文: The situation that the remaining employees come by increasing employees who use childcare leave or child rearing support system is generally said to be “reverse Matahara”.
出典: Yahooニュース

この文章も上と同じく、「しわ寄せ」という単語が消えてしまう誤訳が起きています。

そして2文目と同様に「来る」という部分だけが残り、その結果「remaining employees come by ~」という文章に変わってしまっています。これでは「残る社員達が(育休制度を利用する社員へ)来る」という文章になってしまい意味不明になってしまいます。

誤訳のパターンも2文目と同じなら、対応策も2文目と同じ

つまり「しわ寄せ」を「悪影響」と入れ替えるのです。「育休制度を利用する社員が増えることで、その他の社員に悪影響が出る」とすれば「By increasing the number of employees who use the childcare leave system, other employees are adversely affected.」となって意味の伝わる表現ができあがり。

ただ、これを「~という事態は~」に繋げようとすると、英訳文で「その他の社員(other employees)」が文の最初にやって来てしまい、流れが不自然になってしまいます

なので文章を2つに切り分け、「育休制度を利用する社員が増えることで、その他の社員に悪影響が出る。こうした事態は「逆マタハラ」と呼ばれる。」とすれば、意味が伝わりかつ流れも不自然にならない英訳文ができあがります。(「マタハラ」は英訳させると「Matahara」となってしまいますが、「マタニティハラスメント」と略さず表記すればちゃんと英訳してくれます。)

また、この文章もやはり「burden」を使って同じ意味を表す英訳文が作れます。その場合は「育休制度を利用する社員が増えることで、その他の社員の負担増につながる。こうした事態は「逆マタハラ」と呼ばれる。」という入力でOK。

4文目

原文: 「しわ寄せはいつも技術者に来る」「笑えるどころか胃が痛くなってきた」 エンジニアの苦悩を描いた動画に世界中が共感

Google翻訳文: “Come to the engineer all the time” “Empathy worldwide sympathize with animation depicting the suffering of engineers that” the stomach has become painful not to laugh “

出典: ねとらぼ

やはりというか何というか、この文も「しわ寄せ」が抜け落ちて「来る」だけが「come」と訳されるパターンです。対応策も全く同じ。つまりは「しわ寄せ」に代わる別の言葉で日本語の文章を再構成しないと、読んでわかる英訳文は出力されません。

これまでと同じ「悪影響」や「重荷・負担」を訳させる方法はここでも有効ですが、また別の言い方として「engineers are always victims」という表現もありでしょう。他者の都合で負担が降りかかる、不利益を被るということを表すため、「被害を受ける人」という意味で「victim」を使いました。これは「エンジニアはいつも被害者だ」と入力すれば出てきます。

5文目

原文: IT関連企業。大手ITベンダーの働き方改革のしわ寄せで、下請中小ITベンダーの労働時間が増大し、これを嫌って若手SEの定着が悪化。

Google翻訳文: IT related company. By virtue of major IT vendors working way of reform, subcontracting small and medium-sized IT vendors Working hours have increased, hated this and the establishment of young SEs got worse.

出典

この文章はこれまでとは少しだけ違います。直接「しわ寄せ」に対応する英語表現があるわけではないのですが、「by virtue of」言葉には「~を理由として、~のおかげで」という意味があります。

結局「しわ寄せ」を訳せていない点はこれまでと同じですが、単に言葉が抜け落ちたわけではなく、ITベンダーの働き方改革が原因となって下請会社の労働時間が増大したという結果が生じた、という因果関係はちゃんとくみ取れた訳文ができています

おそらくはこの訳もこれまでと同じで、Google翻訳は「しわ寄せ」という言葉を訳すことはできなかったのだと思います。ですがその上で、どうにかこの文章を「何らかの原因があって、結果これこれの事態が生じた」という因果関係の説明を含む文章だと読み解いたのでしょう。

この文章は1文目と同じで、「しわ寄せ」を「影響」と言い換えても全体の意味は大きく代わらない文章です。そこから転じて、働き方改革の影響という原因があり、下請会社の労働時間が増えたという文全体の要旨を結果として抽出できたというのは見事といえるでしょう。

ここまで見てきた限りでは、どうもGoogle翻訳で「しわ寄せ」が的確に訳される確率はけして高くはないようです。
「しわ寄せ」を含む文章を英訳させる際はそのまま訳させず、「影響が出る」や「負担増につながる」など、簡潔な言い方に書き換えた方が誤訳を減らせることでしょう。

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