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「塩対応」はどうすればGoogle翻訳で英訳できる?

今回取り上げる言葉は「塩対応」。使わないけど聞いたことはある、という人もいるのではないでしょうか?

用例を見ればなんとなくニュアンスのわかる言葉でも、Google翻訳はちゃんと意味を把握できるのか、この記事を読み進めて確かめてみましょう。

塩対応の意味

まずは意味の確認から。「塩対応」という言葉の定義としては、以下のような説明があります。

そっけない、愛想のない、冷淡な接し方を指す言い方。いわゆる「しょっぱい」対応という意味の語。

「しょっぱい」は主に味の塩辛さを表現する語であるが、この他に、表情などに不快さが表れている様子を指すことがある。「(相手を)舐めている」という表現が連想されている場合もある。

「塩対応」は、アイドルの握手会などにおける素っ気ない(ファンとしては残念な)対応を指す表現としてしばしば用いられる。単に「塩」と呼ばれている場合もある。この「塩対応」に対して、ファンを大事に扱う真心が感じられる対応は「神対応」などと呼ばれる。

そっけない、残念な、という意味で使われる「しょっぱい」は、もともと格闘技で使われていた意味だとか。それが転じて味気ない、そっけない対応が「塩対応」になったようですね。

「そっけない」という形容詞に対応する英語は「curt」や「blunt」などがあるので、塩対応だと言いたいときはこうした言葉が使えるでしょう。

ちなみに英語で人の動作や態度について「salty(塩辛い)」と言った場合、辛辣な、きわどい、というような意味になります。ただそっけないだけの塩対応よりもさらに冷たい、どちらかといえば攻撃的な態度を表すので要注意です。

それでは、以下から複数の訳文を見ていきましょう。

文章1

原文: アイドルや女優さんが塩対応するのを見て上から目線で生意気だと思いながらも目で追ってしまうことってありませんか?!

訳文: Watching idols and actresses correspond to salt, from the top I think that they are cheeky with a line of sight, but do not you keep tracking with your eyes? !

出典: https://cyuncore.com/love/12147

この文章で「塩対応」に対応する訳語は「correspond to salt」。これでは「しょっぱい対応(塩のような対応)」ではなく、「塩の対応物である(=塩と同等である)」という意味になってしまいます。

文字だけ追えばある程度合っているようでも、意味の上では全然違います。塩のようだと形容される対応を取ることと、塩と同等であると言われるのとでは天と地ほども違うもの

原文を書き換えて「塩のような対応するのを~」にしても、出てくる訳文は「respond like salt」で「塩のように対応する」という意味に。「salty response」ならまだニュアンスは違うなりに意味をなす文になりますが、これでは意味不明です。

文章2

原文: それってもしかして、あなたの行動や言動が知らないうちに男子を遠ざける「塩対応」になっているのかも…。

訳文: Maybe, maybe it’s becoming “salt-friendly” to keep boys away while you do not know your behavior and behavior.

出典: https://www.alicey.jp/article/88736

この文章の「塩対応」には「salt-friendly」という訳語が対応しています。「塩に対してフレンドリー」とはどういうことでしょう?

日本語でもユーザーフレンドリーなどというように、英語で「〇〇-friendly」という場合は「〇〇にとって使いやすい」あるいは「〇〇にとってマイナスにならない」という意味になります

ここでは対応という言葉を「塩に対して使っても大丈夫」という解釈を取ったのだと思われます。その結果訳語が「salt friendly」になったのではないでしょうか。

文章3

原文: いつも親切にしてくれる男子に、厳しく“塩対応”する女の子を描いた漫画が甘々で尊過ぎると話題になっています。

訳文: To men who are always kind, it is becoming a topic that manga which strictly depicts a girl who “sees salt” is too sweet and too honorable.

出典: http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1808/07/news027.html

ここで「塩対応」に対応する訳語は「sees salt」。直訳すれば「塩を見る」という意味です。誤訳ということだけはよくわかるのですが、なぜこうなったのか……?

単語のチョイスが間違ってはいるものの、ここの訳にはひとつ個人的に感心した点があります。

それは「」内にあった塩対応という名詞を、「sees salt」と動詞+目的語に変換して訳したところ

この原文は「厳しく(形容詞)「塩対応」(名詞)する(動詞)」という構造になっています。英訳の際はなんとなく「give(動詞) a “blunt response”(名詞) in a harsh way(「厳しく」に相当する修飾語)」としてしまいたくなるところを、” ”の中に「塩対応する(sees salt)」とまとめてしまったのは少し興味深い挙動だと思いました。

ただこの文章には「strict」(厳しく)の位置があるべき場所にないなど、別にいくつか誤訳があります。そのせいで結局のところよい文章にはなっていないのですが、このようなごく微妙な構造の変更をした裏にはどのような判断があったのか興味を惹かれるのに変わりはありません。

ゆくゆくはGoogle翻訳にも、何らかの形で判断の根拠を示す機能がほしいものです

文章4

原文: 男子100人にアンケートを行ったところ、「塩対応」の女性がアリと答えたのは25%という結果に。

訳文: A questionnaire was given to 100 male boys, and it was 25% that the woman who answered “Salt” answered ant.

出典: https://ananweb.jp/news/106973/

この英訳文は「「塩対応」の女性」までを含めて「the woman who answered “Salt”」としています。

残念ながらこれは誤訳で、これでは「「塩」と回答した女性」という意味になってしまいます。「対応」を「応答・返答」の意味で解釈した結果、「answer」という英単語を当てはめたのでしょう。

誤訳を言うなら文章の構成から無茶苦茶で、まずは100人の男子に対してアンケートを配布し、次に塩と答えた女性(the woman who answered “Salt”)が蟻だと答えた(answered ant、アリが虫の蟻と解釈されている点に注目)割合が25%であるという、読んでいて全く意図がつかめない文章です。

本来伝えたい意図は、アンケートに回答した男性100人のうち、女性から塩対応されても構わないと答えた割合は25%であった、ということ

アンケートに回答した男性100人のうち25%が、女性が冷たく振る舞ってもOKだと答えた。」と入力すれば「Twenty-five percent of the 100 men who responded to the questionnaire replied that it is okay for women to act coldly.」という、まだ意味の通じやすい訳語が出力されます。

「〇〇のうち~~%が」という表現にすれば、全体がこれだけあって、うちどれほどが含まれる、という対応関係が混乱なく訳されます。

また「塩対応の女性」という名詞ではなく、「女性が冷たく振る舞っても」という名詞+動詞の形に書き換えることで、英語に直訳しやすい表現に近づけています。これに限らず、修飾節や修飾語がついた名詞よりも、名詞+動詞で表現したほうが読みやすい訳語が出力されることがあるので、Google翻訳を使う場合は意識してみましょう。

こうした例を見ていくと、「塩対応」という言葉にGoogle翻訳はほぼ対応できないと考えていいでしょう。

「塩対応」というニュアンスのことを言いたいときは、「冷たい対応」や「そっけない対応」など、従来から使われる言葉に直してから訳させた方が確実です。

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