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「組織」と「慈善団体」から見える、エキサイト翻訳の経済観念?

Our houses of worship

この訳を見比べてみると、Google翻訳では「私たちの礼拝堂」、エキサイト翻訳では「礼拝の私達の家」となっています。

Google翻訳の訳は問題なさそうです。House of worshipで「礼拝堂」や「神殿」など、神に祈りを捧げる場所という意味があります。キリスト教が多いアメリカでは礼拝堂として教会を思い浮かべるむきもあるでしょうが、キリスト教徒以外も含むと考えれば、広い意味での「礼拝堂」が妥当でしょう。

一方エキサイト翻訳は「礼拝の私達の家」というおかしな訳。しかしただおかしいだけでなく、よく見てみるとなぜこうなったのかがわかる訳でもあります。

Google翻訳の場合はこの文節をour / houses of worshipで区切った上で訳してします。すると訳文は「私たちの礼拝堂」となるのですが、どうやらエキサイト翻訳は「our / houses/ of worship」という区切りで訳したように思えます。

それぞれの単語ごとに訳してみると、ourで「私たち」、housesが「家」、of worshipが「礼拝の」という語に置き換えられます。そしてofに続く単語は基本的に日本語に訳された場合、ofの前にある単語に先立って配置されます。なのでそのルールに従うと「礼拝の家」という言葉ができあがり、原文でその前にある「私たち」が語順通りにくっついた、という訳し方をしたのが透けて見えます。

House of worshipという表現は一般的な慣用表現で、辞書のデータにアクセスできれば簡単に見つかる表現のはずです。ところがエキサイト翻訳は、推測ですが、文章を前から区切りつつ読み進めて訳していき、house of worshipという表現が出てきてもさかのぼって修正することなく訳していくという方法をとったため、このように慣用表現を無視した表現になったものと考えられます。

Those who have contributed to charitable organization

この箇所の訳文は、Google翻訳で「慈善団体に貢献した人々」、エキサイト翻訳では「慈善の組織に寄付した人々」となっています。

Charitable organizationを「慈善団体」と訳したGoogle翻訳の言葉のチョイスが自然であるのは言うまでもないでしょう。ここで気になったのがContributeの訳語。Google翻訳では「貢献」、エキサイト翻訳では「寄付」となっています。

辞書を引くとContributeとは「貢献する」あるいは「力を貸す」というような意味合い。ボランティアに参加して現場で力を貸すなど、寄付以外の方法で慈善団体に貢献する人もなるほどきっといたことでしょう。そこまで含めると、寄付という言葉で範囲を絞るのは考えもののように思えます。

とはいえギビングチューズデーの趣旨を考えたならば、ここは寄付という意味に絞ってしまうのもありなのではないでしょうか。実際にケンブリッジ英英辞典で調べてみると、Contributeという語は他者に与える、貢献するという意味を持ちながら、とりわけお金を募るかたちで貢献するという意味が強調されています。前述の事情を考えれば貢献という訳語が妥当と思える一方で、寄付という言葉を使うことにもある程度の理がありそうです。
対するエキサイト翻訳は「寄付」として、意味を絞っています。辞書の意味を厳密にくみ取った訳語と考えれば納得ですね。

ここで、「Contribute to charity」と、「Contribute to organization」という、貢献の対象を変えた2つの文をエキサイト翻訳にかけてみました。すると、前者は「慈善活動に寄与しなさい」となり、後者は「組織に寄付しなさい」となり、Contributeの訳し分けが発生したのです。

どうやらエキサイト翻訳はギビングチューズデーに合わせた訳をしたわけではなさそうです。慈善活動には「寄与」、組織には「寄付」をするという風に、対象に合わせて訳語が決定されるというルールに従っただけであるようす。しかし組織のため尽力するという意味で「貢献」という言葉が使われてもよさそうなのに、なぜお金にフォーカスした「寄付」なのか? 営利団体を含む「組織」という言葉と、営利を追求しない場合が多い「慈善団体」の言葉のニュアンスを汲んだ上での訳語選定なのかもしれません。

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