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「実際」だけではダメ?「actually」の読み解き方

英語で「actually」や「in fact」という時、「これは実際のことである」というニュアンスを足すために使われています。辞書には「実際は」や「現実には」という意味が載っていますが、「実のところ」和訳する場合には細かな注意が必要な表現なのです。

今回の原文はWikiquoteより、以下の引用文

The Nazis spoke of having a Jewish problem. We now speak of having a drug-abuse problem. Actually, “Jewish problem” was the name the Germans gave to their persecution of the Jews; “drug-abuse problem” is the name we give to the persecution of people who use certain drugs. ~ Thomas Szasz

Google翻訳で和訳した訳文はこちら

ナチスはユダヤ人の問題を抱えていると話しました。 私たちは現在、薬物乱用の問題について話しています。実際、「ユダヤ人の問題」は、ドイツ人がユダヤ人を迫害したという名前でした。 「薬物乱用問題」とは、特定の薬物を使用する人々の迫害に私たちが与える名前です。 〜トーマス・ザザ

それでは、訳文のポイントを見ていきましょう。

actually

この単語は訳文中で「実際」と訳されていますが、この単語は少し注意が必要です。

「Actually」という言葉に含められた意味は、もっぱら「これは事実である」ということの強調です。これだけ考えるなら「実際」という和訳で事足りるのですが、この言葉が出てくる以前の文脈に応じて訳語を変える必要があります

「Actually」という言葉が使われるケースはおおまかに分けて2種類。ひとつは事実に即したある主張や言説があって、その根拠として実例を挙げる場合。もうひとつは事実と異なる主張や言説があって、その反証として実例を挙げる場合です。

前者の場合であれば例えば「そして事実として」のように順接の意味を含めた言い方を、そして後者の場合であれば「しかし実際には」のように、逆接の意味を含めるのが望ましいと思われます。こうすることで事実に即した主張に対してはその正当性を強調するようなニュアンスに、逆に事実に反する主張に対してはその反証として事実を提示するようなニュアンスが生まれます。

「Actually」の訳し方はこのように2種類に分類できるのですが、では、この記事で取り扱う文章はどうなるでしょうか。

この文章の前半部分は、ナチスが語った「ユダヤ人の問題」という言葉の正確さについて語られています。ナチスの言う「ユダヤ人の問題」とは、ユダヤ人そのものが問題なのではなく、ナチスのユダヤ人迫害こそが真の問題であるというのが文章の要旨。つまり、ナチスの言う「ユダヤ人の問題」は現実を反映した言葉でないということになります。

ということは、「ユダヤ人の問題」という言葉が実態に即していない言葉であることを示すために実例を挙げているわけです。そこで出てくる「actually」なのですから、これは上記の分類でいえば後者の例となります。なので、例えば「しかし現実には」や「ところが実態は」といった訳語が望ましいでしょう。

persecution of people

これは「人々の迫害」と訳されていますが、この言い方は人々が「迫害する」のか「迫害される」のか、解釈を取り違える余地が残ってしまいます。このように「of」で結ばれた名詞を単に「○○の~」としただけでは、意味が取りにくくなってしまう場合があります。

この文章の要旨をくみ取れば、迫害されているのは「people who use certain drugs」だと読み取れます。つまり、人々は「迫害されている」ので、それとわかるような訳語が望ましいでしょう。一例として「人々に対する迫害」という言い方があるでしょうか。

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