接続詞には「~だがしかし」の逆接と、「~であり、それで」の順接があるのは周知のこと。
ですが、接続詞として使われる言葉だけからどちらかを判断することは必ずしもできることではない様子。原文を書く人間が少し気を遣わないと、機械翻訳では間違えることがあるみたいです。
今回の原文は今すぐ使える英語メール文例集より次の文面。
いつもお世話になり、ありがとうございます。
ご依頼の納期延長の件ですが、大変申し訳ないですがお受けできません。現在弊社といたしましてもスッキリトレールの販売が主力になっておりますので、どうしても○月○日までに納品して頂きたいのです。御社とは長年お付き合いをさせていただいております。
Google翻訳にかけた訳文は以下の通りでした。
Thank you for always taking care of me.
Although it is the matter of extending the delivery date of the request, I am very sorry but I can not accept it. Since we are currently selling refreshing trails as our main products, we would like you to deliver them by month ○ ○ by all means. I have a relationship with you for many years.
訳文の要点を見ていきましょう。
「お世話になり」
ここの訳文は「Thank you for always taking care of me.」。「いつも面倒を見てくれてありがとうございます」という意味の英訳文になってしまう、Google翻訳にはありがちの訳です。
以前の記事でも何度か触れましたが、ここで欲しいのは「日頃からのご愛顧ありがとうございます」という旨の英文。幸いなことに「日頃からの~」と入力するとぴったりの文面が出てくるので、日本語文をリライトすればすぐに解決です。
納期延長の件ですが
この箇所の訳は「although it is the matter of extending the delivery date」。ここで注意すべきは最初に出てくる「although」です。
「although」は相反する事柄同士をつなげる逆接の言葉です。例えば「晴天ですが雨がぱらぱらと降っています」という文章は逆接の一例。普通なら雨の時は空が曇っているのですから、晴天と雨は相反する事柄です。そういう時に逆接の接続詞が使われるのです。
この文章の場合はどうでしょうか。
全体を見ると、ここに相反する事柄はないように思えます。どちらかというとこの原文に出てくる「ですが」は、話題の転換のため使われているようです。つまり、何かの話をするときに、その準備として前提を共有するため「~について、~に関して」と言うのと同じ。なのでここの「ですが」を書き換えると、「~に関する話をします、それについて……」というようになるでしょう。
そうなるとここで欲しいのは「although」ではなく「as of」や「as for」のような、「~について」を表す語句です。一例として「ご依頼の納期延長の件に関しては、大変申し訳ないですがお受けできません。」と書き換えると「Regarding the matter of extending the deadline of the request, we are sorry, but we can not accept it.」という訳語になるので、これがそのまま使えるはず。
念のためもう一点。これは社用のメールなので、自社を表す主語は「we」としておきたいところ。確実に「we」を出力させるためにはどこかに「私ども」といった主語を補い、「ご依頼の納期延長の件に関しては、大変申し訳ないですが私どもではお受けできません。」のようにすれば主語の選択も確実に行われます。
御社とは長年お付き合いをさせていただいています。
訳語が「I have a relationship with you for many years.」。先ほどのトピックと重なりますが、会社の人間としてメールを送っているのですから、ここは主語を「I」ではなく「we」にしたいところ。
加えて「お付き合い」というところも単に「a relationship」とされています。ここももう少し具体的に「business relationship(ビジネス関係)」にできればいいでしょう。
「私たちは長期的なビジネス関係を築いてきました」と入力すれば「We have build a long-lasting business relationship」という訳文ができます。言わんとすることはこれで伝わるはず。