Loading...

主語を代名詞にするとGoogle翻訳では誤訳されにくい?

機械翻訳を使う上で注意すべきパターンの一つに、原文の一部が省略されてしまうという誤訳パターンがあります。

文章が長くなると起こりやすくなる現象ですが、場合によってはごく短い文章でも発生することがあります。今回扱うのはそのようなパターン。原文がシンプルで短くとも、主語と動詞の兼ね合いによって訳文に不可解な省略が発生する文の例です。

今回の原文はWikiquoteより、とある英語のことわざです。

Enjoy the present day, trusting little to what tomorrow may bring. “One of the most tragic things I know about human nature is that all of us tend to put off living. We are all dreaming of some magical rose garden over the horizon-instead of enjoying the roses that are blooming outside our windows today.”

これをGoogle翻訳で訳したのが以下の文章。

明日は何が起こるかを少しでも信じて、今日の日を楽しみましょう。 「私が人間性について知っている最も悲劇的なことの一つは、私たち全員が生きているということです。今日は窓の外に咲いているバラを楽しむ代わりに、魔法のバラ園を夢見ています。

それでは、訳文のポイントを見ていきましょう。

Trusting little to

この訳は「少しでも信じて」となっています。注意すべきは「little」の訳。日本語訳では「少しでも」となっていますが、ここは「明日にはあまり期待せず」というニュアンスが適切と思われます

ここでは「a little」と「little」の意味の差を考える必要があります。
同じ「少し」を表す表現でも「a little」であれば単なる「少し」ですが、「little」であれば「少ししかない」というような否定的なニュアンスが混じります。この基本に沿って考えると、「little」となっているこの文章の訳は後者のニュアンスを含めた「あまり期待しない」とするのがいいでしょう。

これ以降の文章は空想上のものを追いかけて今あるものに目を向けないことを戒めるような内容です。こうした文脈まで含めると、なおさら後者の解釈が適切だと考えられます

that all of us tend to put off living

ここの箇所の訳は「私たち全員が生きているということ」。「最も悲劇的なこと」の具体例として挙げられたものをさす文節ですが、原文の「tend to put off」がすっぽり抜け落ちてしまい、「that all of us are living」だけを訳したような文章になっています

原文から一部だけを抜き出した「All of us tend to put off living」だけを訳させてみても、やはり「tend to put off」のニュアンスが消えてしまいます。うまく訳文に反映させる方法はないものでしょうか?

「tend to put off」がちゃんと出力されるパターンは2種類あります。

1つは、後に続く動名詞を「living」以外のものにすること。例えばこれを「tend to put off staying」にすると「滞在を延期する傾向があります」となります。「延期する」が「put off」の、「傾向がある」が「tend to」に対応しているので、本来こうなるべき訳語がきちんと出力されています。

もうひとつは、主語を別のものに変えることです。

例えば主語を「we」に置き換えて「we tend to put off living」にすると、「私たちは生きることをやめる傾向があります」となる。「put off」の訳語が「やめる」となっているほかは先ほどの訳と同じで、語句の意味をすべて含めた訳文ができています。「We」の他、「I」「You」「He」「She」など、主語が基本的な代名詞であれば省略のない訳文ができあがるのです。

文の意味が省かれるのは、主語にこれ以外のものが来る場合。

原文の「all of us」もうまくいかないパターンのひとつです。この他「father」や「mother」などの一般名詞、また「Bill」などの人名や固有名詞を主語にした場合はある程度結果がまちまちになり、正確な訳文が確実に出力されなくなってしまいます。

一般名詞や固有名詞を主語に据えた場合、単語によっては「put off」と「tend to」の両方が抜けるパターン、あるいはどちらか一方だけが抜け落ちる失敗パターンが見られます。基本的な代名詞以外でもたまに両方が反映される正解パターンが見られますが、高い確率でそうなるのは「I」や「You」などの一般的な代名詞の場合にとどまるようです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です