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Google翻訳がやってしまう、「そっくりさん」の読解ミス

米中首脳会談は合意に至らず終了し、今後もしばらく世界の注目を集めそうな雰囲気。

思えば始まる前から金総書記のそっくりさんが会場であるハノイから追い出されるなど、本題から外れた話題にも事欠かなかった印象です。

このそっくりさんニュース、実は海外でも広く報道されています。

日本でのこのニュースをもし、Google翻訳で英訳して読もうという人がいたとして(ありそうにない仮定)、

果たしてGoogle翻訳は「そっくりさん」のニュアンスを潰さず訳せるのか

……というポイントが気になったので、英語での「そっくりさん」の表現と、Google翻訳での訳語の傾向を調べてみました。

「そっくりさん」に当たる英単語

日本語の「そっくりさん」に当たる英単語はいくつかありますが、この記事では代表的なものを3つ扱うことにしましょう。

lookalike

単純に「外見が似ている人」であることを表す単語。ものまね芸人のようにあえて似せている場合だけでなく、単に顔が似ている場合も含む

impersonator

単に似ているだけでなく、エンターテイメントや詐欺などを目的として他人になりすますというニュアンスを含む

imitation

もっぱら笑いを取ることを目的に、他者の振る舞いや話し方、動作をまねること

それぞれの微妙な違いに注目してみてください。

「詐欺」あるいは「ウケ狙い」という目的の種類、そして「似せている」ことと「単に似ている」ことの違いが、それぞれに微妙なニュアンスの差を生んでいます。

場合によっては「そっくりさん」ではなく、「ものまね芸人」あるいは「なりすまし」と訳するのが適切な場合もあるでしょう。

そっくりさんの英訳

では、英訳の精度はどうか……となると、残念ながら低いというほかありません。外見に関する話という認識はできているんだろうな、とはうかがえますが、ぶっちゃけわかってないなという印象。

そういうわけで、意外なそっくりさんとして、私は発見した。
That’s why I discovered it as a surprising look.

この文章は外見と解釈して「look」と英訳してあります。しかしそっくりさんという言葉には外見が似た「別人」という意味までを含むもの。「look」だけでは単に「外見」なので、「別の誰か」というニュアンスは潰れてしまいます。

どうもGoogle翻訳的にはここが限界のようす。「別の誰か」というニュアンスを出すのは高望みであるような印象です。

もちろん誤訳もつきもので、下記の文章は「そっくり」を「全部まとめて」に近い意味だと解釈したらしく、「surrounding(囲み)」と英訳してしまっています。

世界中のそっくりさんたちをプロ・アマを問わずに招いていた。
I invited all of the world’s surroundings regardless of professional or amateur.

lookalike、impersonator、imitationの和訳

せっかくなので英→日の場合も見てみましょう。

ということで、上に挙げた「そっくりさん」単語3種をGoogle翻訳で和訳してみました。

lookalike

まずはベーシックな「lookalike」。気分的にはシンプル&ストレートに「そっくりさん」と訳してほしいところ……

I won’t get over that in a hurry: my least favourite atrophied Hazel McWitch lookalike in the world, singing “I just want to make love to you”, right there on primetime telly.
私は急いでそれを乗り越えることはしません。世界で一番好きで嫌われているヘーゼルマクウィッチに似ています

出てきた訳語は「似ている」あるいは別の文章では「似顔絵」といったもの。

「似ているもの」という意味はなるほど表現できていますが、もうちょっと頑張ってほしいなという印象。

impersonator

2番手は「impersonator」。これはどうでしょう。

God Save the Queen plays on the background as an impersonator of Adam Sutler enters
アダム・サトラーのなりすましが入ると、「God Save the Queen」がバックグラウンドで演じます。

出たのはまさかの「なりすまし」

こう言うとすごく犯罪のニオイがします。そっくりさん芸人のことも「impersonator」と呼ぶことがあるので、その人たちまでなりすまし扱いはあまりにもヒドイ。

Notes: Character seems to be Dracula at first, but is revealed as an impersonator in the game’s “true” ending.
注意:キャラクターは最初はドラキュラのようですが、ゲームの「本当の」結末の偽装者として明らかにされています。

他に出てきたものも「偽装」や「偽装者」など、あからさまにカタギの気配を消してくる訳語ばかり。

最初の訳文は文脈的に「ものまね芸人」でも良さそうなのに、堂々と「なりすまし」をチョイスしたあたり、芸能関係には疎いか、性悪説を徹底しているようにさえ思えてきます。

imitator

ラストに来るのは「imitator」犯罪の気配だけは消していきたいところですがこれはどうか。

In France, Boccaccio found early and illustrious imitators.
フランスでは、Boccaccioは初期の有名な模倣者を見つけました。

犯罪臭はないけど固い!

ものまねの人やそっくりさんを指して「imitation」という場合もあるので、その辺もうちょっと融通が利くかと思えば

Imitators are a slavish herd and fools in my opinion.
私の考えでは、模倣者は卑劣な群れで愚か者です。

どれもこれも固い。

Guardian誌の記事では、ハノイに現れたトランプ大統領のそっくりさんを「imitator」と表現していました。

この場合は「模倣者」という固い言葉ではなく、「そっくりさん」あるいは「ものまね芸人」のような訳でもOKな気もします。

しかしGoogle翻訳の訳語は十中八九が「模倣者」。この単語に関しては、文章によって訳語の調子を変えるのは期待できないようです。

痒いところに手が届かないのはもはやGoogle翻訳のお家芸のようなもの。「そっくりさん」についても、あまり驚くような結果ではありませんでした。
ただ

文章出典:The Guardian


「Kim」と訳させると時々何の関係もない「容疑者」がくっつく謎現象。これについてはさらに「lookalike(そっくりさん)」の訳を飛ばしているというおまけつき。

この「金容疑者現象」、ごくごくたまに発生するのですが、これは一体どういう学習データに基づくものなのか……。

悪意があってのことではないと信じていますが、時々、学習に使ったコーパスを覗いてみたいとは思います。

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