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「突き当たり」を機械翻訳に訳させるとき、たったひとつ気をつけること

文章や口頭で道案内をするとき、高い頻度で使われるのが「突き当たり」という言葉。何気なく使っている言葉ですが、英語でどう言えばいいのかは案外知らないものではないでしょうか?

今回の記事では、「突き当たり」に相当する英語表現と、Google翻訳がどれほど正確に英訳してくれるのかを探っていきます。

訳文を見ていく前に、今回扱う「突き当たり」という語の意味を確認しておきましょう。

端的に言えば「突き当たり」とは「終端」を指す言葉です。ですので英訳するとなると「the end of~(~の終端)」という表現が当てはまるでしょう。

意味を解きほぐせばシンプルな英訳なのですが、Google翻訳はそこまで読み取ってくれるでしょうか? 結論から言えば、ひとつのことに気をつけたならば、高い確率で正確に英訳してくれるようです。

以下から個別の英訳文を見ていきましょう。

1文目

原文: 中には細い廊下があり、その突き当たりは非常にどっしりした鉄の扉だった。

Google翻訳: There was a narrow corridor in the inside, at the end of which was a very solid iron door.

出典: 『シャーロック・ホームズの冒険』

「突き当たり」の訳語は「at the end of which」。この文章の英訳文は、コンマで区切られた前半の文節に対応した関係代名詞と組み合わさっています。「which」が「corridor(廊下)」を指す代名詞になっているわけですね。「the end of」と訳されているこの訳文は、「突き当たり」の意味を正確に把握できています

他の箇所を見ると、「in the inside」という表現がちょっとツッコミどころ。「inside there was」や「within there was」という方が自然でしょう。ちなみに、原文は後者の表現になっています。

このほか「細い廊下」が「small corridor」と訳されていますが、「small」では少しニュアンスが違ってしまいます。ここは「narrow corridor(狭い廊下)」としたほうが、より「細い」という言葉に近くなるでしょう。

2文目

原文: 車両1の走行経路は、直線通路区間を含んでおり、その直線通路区間の突き当り位置に反射鏡2が設けられている。

英訳: The traveling path of the vehicle 1 includes a straight passage section, and the reflecting mirror 2 is provided at the position of abutment of the straight path section.

「突き当り位置」の訳語として「position of abutment」という語が当てられています「abutment」とは「隣接・接合部」という意味の単語。現在進行系で形容詞系となっているので、「position of abutment」とは「接合部」という意味になるでしょうか。

これでは少し意味が違うので、なんとか「the end」にしたいところ。この訳語にするにはどうすればいいでしょうか。

まずは表記ゆれによる解釈の違いを疑って「車両1の走行経路は、直線通路区間を含んでおり、その直線通路区間の突き当たり位置に反射鏡2が設けられている。」と書き換えました。すると訳語は「The traveling path of the vehicle 1 includes a straight passage section, and the reflecting mirror 2 is provided at a position of the straight path section at which the vehicle 1 is struck.」へと変化。「突き当たり」に対応する訳が「a position of ~ at which the vehicle 1 is struck」に変わっています。

この文節を解釈すると「(反射鏡2が設けられているのは)直線通路区間内で車両1が襲われる場所」という意味になります。「突き当たり」を「終点」ではなく、突き当たる、つまり激突するという意味に解釈した結果、「struck」という単語がチョイスされたのでしょう

次は表記をそのままに原文から「位置」という単語を削り、「車両1の走行経路は、直線通路区間を含んでおり、その直線通路区間の突き当りに反射鏡2が設けられている。」としました。

すると「The traveling path of the vehicle 1 includes a straight passage section, and a reflecting mirror 2 is provided at the end of the straight path section.」となりました。「突き当り」が「at the end」になっているのに注目してください。ねじくれた訳語になってしまうのは「位置」という単語が原因だったもよう

「突き当り」表記でもちゃんと「the end」という訳語が出たところを見ると、この表記ゆれは英訳に影響しないようです。

3文目

原文: 観音正寺への巡礼参道である赤坂道の参道入り口を右におれ、突き当りの石段を上がると六角氏の御館跡がある。

英訳: On the right side of the entrance of Akasakado which is a pilgrimage approach to Kanno temple, turn right at the entrance of the entrance, and when you go up the stone stairs at the end, there is a ruins of Mr. Hakkaku.

出典: Wikipedia日英京都関連文書対訳コーパス

「突き当りの石段」をちゃんと「stone stairs at the end(突き当りにある石段)」と訳せているので、この訳文は及第点。この場合でも「突き当り」表記で正確な訳語が出てきたところを見るに、やはり表記ゆれは訳語にあまり影響しないようです。

全体としては「だいたい言いたいことはわかる」レベルの訳文ですが、気になったのは最後の「Mr.Hakkaku」という語。「六角氏」をそのままアルファベット表記すればいいはずなのになぜか「六角」から「八角」と2つサバを読む英訳になっています。

「氏」が「Mr.」と訳されているのも微妙な間違いです。「Mr.」ではあたかも個人を指しているような表現になってしまいますが、この文の六角氏とは個人ではなく氏族、つまり一族郎党から構成される集団を指しているのです。このような団体を指す英単語は「clan」なので、本来ここの訳語は「Rokkaku clan」となるのが正しい訳です。

戦国時代の大名家などをまとめて指し示すときはもっぱら「clan」が使われ、「Minamoto clan」や「Tokugawa clan」と英訳されています。中世日本の文献を見ることがあれば探してみてください。

数こそ少ないですが上記の訳文を見る限り、「突き当たり」という日本語は大体の場合正確に訳してくれると考えていいでしょう。ある程度の表記ゆれがあっても英訳に問題はないようですが、「突き当たり位置」のように、後に単語を続けることは避けた方が無難なようです。

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