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「重ね重ね」の2つの意味、確実に訳してくれるのはそのうち1つ?

お礼やお詫びなどを言うときに使われる「重ね重ね」という表現、フォーマルな場ではよく見られる表現です。

便利な言い回しですが、Google翻訳との親和性はどうなのでしょうか? この記事では「重ね重ね」という表現の英訳表現と、Google翻訳がちゃんと訳せるかどうかを見ていきます。

辞書には、「重ね重ね」の意味が次のように紹介されています。

同じようなことが繰り返されるさま。たびたび。

念入りに相手に頼み込むさま。自分の心情の深さを相手に伝えようとするさま。くれぐれも。重々 (じゅうじゅう) 。

前者の意味なら「繰り返す」という意味として「repeatedly(反復的な)」という単語が当てはまります。後者の意味であれば「deeply(深く)」や「sincerely(心より)」など、程度を強める副詞として訳せば適切になるでしょう。

このような意味を持つ「重ね重ね」をGoogle翻訳で英訳させてみました。結論から言って、「繰り返す」という意味で使う場合はおおむね問題なく訳してくれます

以下から訳文を詳しく見ていきましょう。

1文目

原文: 何でも猿の殺されたのは人違いだったらしいという噂である。 桃太郎はこういう重ね重ねの不幸に嘆息を洩らさずにはいられなかった。

訳文: It is a rumor that it seems that the monkey was murdered everything was wrong. Momotaro could not help sacrificing such a repeated misfortune.

出典: 芥川竜之介『桃太郎』より引用

ここで使われる「重ね重ね」は繰り返しの意味です。Google翻訳の作った英訳は「repeated misfortune」。「繰り返される不幸」という意味なので、ちゃんと原文のニュアンスを反映できています

本筋と関係のないところで気にかかるのが「嘆息」の訳語。辞書を引くと「悲しんだりがっかりしたりしてため息をつくこと」とありますが、訳語として使われているのは「sacrifice(犠牲にする)」という単語。

これでは「重ね重ねの不幸を犠牲にせずにはいられなかった」となってしまいます。

「嘆息を洩らす」という言葉はGoogle翻訳には難しかったようです。ここはシンプルに「ため息をつかずにはいられなかった」と書き直せば、ちゃんと「sigh(ため息をつく)」という単語に訳してくれます。

「sigh」という言葉で「悲しむ・嘆く」を表すには「sigh over」や「sigh at」という表現がありますが、Google翻訳で日本語から訳させるのは難しいので断念。

2文目

原文:彼によれば、あまりに何度も鼻に挑戦するために、絵が重ね重ね塗り直されたかのように作品が立体的になっているというのだ。

訳文: According to him, in order to challenge the nose too many times, the work is three-dimensional as if paintings were repainted repeatedly.

「as if(~であるかのように) paintings(絵が) were repainted repeatedly(反復的に塗り直された)」という英訳なので、単語だけならこの英訳も合格点

ただ文全体を見るとひとつ残念な点が。それは「挑戦するために」という箇所の訳語です。本来なら理由を表す「ために」なので「because」などになるべきですが、英訳文では「in order to」と訳されています。

これでは「何度も鼻に挑戦する」ことが目的になってしまいます。「~ために」は日本語では「理由」と「目的」の両方の意味で使われますが、勘のよくないGoogle翻訳のためにはちゃんと「~なので」のように書き分けてやるといいでしょう。

3文目

原文: 重ね重ね言うようだが、芸術に於ては、親分も子分も、また友人さえ、無いもののように私には思われる。

訳文: It seems to be said repeatedly, but in art, it seems to me like a boss, a baby, even a friend, nothing.

出典: 太宰治『如是我聞』より引用

「重ね重ね」の訳語が「repeatedly」。これまでと同様に単語レベルの訳はいいのですが、やはり文章全体ではいくつか気になる点が。

まず、「ようだが」に対応する「It seems to」という表現。字義としては合っているのですが、「it seems」は「推測した結果そう思われる」という意味。ここでは「自分はこのことを何度か言ったかもしれないが(あえてまた言う)」という文脈で使われているので、自分の行為について推測を働かせるというのは不自然に思われます

「it seems」よりは「I might have said repeatedly(繰り返し言ってきたかもしれないが)」という方が自然でしょう。

また後半部分の訳が、「it seems to me like a boss, a baby, even a friend, nothing(親分であり、赤子であり、果ては友人であり、無であるように思われる)」というような意味不明な訳語に。

このような文章の英訳には、「You」を主語にした表現が使えるでしょう。英語では主語を「you」として、相手に語りかけるような形式で一般的なことを語るということがよく行われます

なので、「in the world of art, you don’t have a boss, a follower, or even a friend(芸術の世界では、あなたには親分も子分も、友達さえもいない)」という訳語になれば、言わんとすることが伝わるはず。

4文目

原文: 重ね重ね、ありがとうございました。

訳文: Thank you very much.

これまでは明らかな「繰り返し」の意味で使われていた場合の訳を見てきましたが、ここではもうひとつ、心情の深さを伝える意味とも解釈できる文章を訳させてみました。結果はごくシンプルな「Thank you very much」。繰り返しではなく「深く・心から」のような意味で解釈されています

解釈も表現も問題はないでしょう。

5文目

原文: 重ね重ね申し訳ございません。

訳文: I’m sorry to hear that.

こちらも上記と同じ、「重ね重ね」が心情の深さを表す言葉と解釈できる場面です。

しかしこちらの訳は先程の文章ほどうまくいっていない様子。「I’m sorry to hear that」という表現は、相手から何かを聞いて、その上で相手に同情を示すという場面で使われますが、「重ね重ね」が示すような強意の意味はありません

心から謝罪しているというニュアンスで英訳するのであれば、「I’m very sorry(本当にすみません)」や「I sincerely apologize(心よりお詫びします)」などがいいでしょう。

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