Loading...

意味のなさそうなコンマを切り捨てるGoogle翻訳の無慈悲

山野で起きる火事は恐ろしいものですが、森林のもつ自然のサイクルの一部でもあるものです。そうした自然のサイクルを滞らせないため、また木々が増えすぎて火災の大規模化を防ぐため、小規模な火災を人工的に起こす地域まであるのです。
そのため、エコロジーの一環としての火災を研究することは大事なことです。今回の文章は、NASAの行った研究についての一節。機械翻訳はどう読み取ったのでしょうか。

今回の原文は、NASAのツイッターのつぶやきから

Our scientists uncovered a wildfire paradox: a wet winter corresponds to more small wildfires in the following fire season, not fewer, as is commonly assumed.

これは、冬場の湿度と山火事の発生件数に関する研究発表の要約になっています。冬場の湿度が高ければその後の山火事は少ないだろうと想像できますがさにあらず。研究では冬場の湿度が高いと、小規模な火災の発生件数はむしろ増えるのだということが明らかになりました。

それを140文字に収めたこの原文、Google翻訳とエキサイト翻訳はどう訳すのでしょうか。

Google翻訳

私たちの科学者は山火事のパラドックスを明らかにしました。湿った冬は、次の火災の季節に、より小さな森林火災に対応します。

エキサイト翻訳

私達の科学者は森林火災逆説をむきだしにした:次の火季節、より不少しには、雨天冬が、 一般的に仮定される それとしてより小さい森林火災と一致している。

それでは、訳文の気になった点を見ていきましょう。

wildfire paradox

Google翻訳は「山火事のパラドックス」、エキサイト翻訳は「森林火災逆説」となっています。なんとなく言いたいことはわかりますが、どうも腑に落ちない訳語です。

例えば「conspiracy theory(陰謀論)」や「Murphy’s law(マーフィーの法則)」などのように、名詞が並んでいる場合はそれぞれの単語をそのままつなげるか、あるいは「~の〇〇」のように言い表す場合は多々あります。

とはいえ「山火事のパラドックス」と言ってしまうと、まるでこれだけが山火事に関連して起こる逆説的な出来事であるかのように聞こえてしまいます。現実には山火事のすべてが解明されたわけではないので、こう断言してしまうのは間違いでしょう。「a wildfire paradox」と単数形になっているのは、「山火事に関する逆説のうちのひとつ」というニュアンスを表しているのではないでしょうか。

なのでここの訳は、「山火事に関連するパラドックス」あるいは「山火事にまつわるパラドックス」という風に、間に何かを挟む方がいいように思われます。

more small wildfires

どちらの訳語も「より小さな」となっているが、これではニュアンスが伝わりにくい書き方です。

「より小さな」だと、火事の規模が小さいようにも読み取れてしまいます。ところが原文はそうは言っていません。規模の小さい火事と言いたいのであれば「smaller wildfire」と言っているはず。

なのでここは「more small / wildfire」ではなく「more / small wildfire」と区切って読むべきでしょう。そしてこう区切って解釈すると「規模の小さい山火事の数が増える」という意味になります。

not fewer以降の訳文

Google翻訳の訳文は、コンマで区切られた「not fewer」以降の部分が抜け落ちた訳になっています。抜け落ちた部分の意味は、「一般的に推測されるように数が減るわけではない」というぐらいの意味でしょうか。

試しに、コンマで区切った個所をそれぞれ削って訳文を作ってみましょう。まず、一番後にくる「as is commonly assumed」を抜いてGoogle翻訳にかけても、相変わらず「not fewer」以降の意味は抜け落ちています。

次に、「not fewer」だけを抜いてみるとどうなるでしょう? 結果は次のように

私たちの科学者は山火事のパラドックスを明らかにしました。湿った冬は、一般的に想定されているように、次の火の季節に、より小さな荒れた火災に対応します。

となり、「一般的に想定されているように(as is commonly assumed)」のニュアンスが生きています。

このことから、コンマで区切ってあり、かつ「as」や「and」などの接続詞がない場合、Google翻訳の訳語からはカットされてしまうことがわかります。

そして、原文をそのまま訳した訳語を見る限り、一度接続詞なしでコンマ区切りをした場合、それ以降に接続詞をちゃんと使って区切っている部分があっても、一緒に削られてしまうらしいこともわかります。

日常会話では接続詞無しで話してしまうこともたまにはあることでしょう。しかしGoogle翻訳にちゃんと読んでもらおうと思ったなら、ちゃんと接続詞有りでコンマ区切りをするか、いっそピリオドで切ってしまうように心がけるのがよいようです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です