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機械翻訳だけでなく、人間も注意すべき「マニアック」の英訳

「マニア」という言葉は外来語でありながら、英語と日本語でニュアンスが大きく違う言葉です。注意しないと余計な意味まで含めてしまいかねません。

人間でもハマりかねないこの罠には、Google翻訳も見事にかかってしまいました。

今回の原文は、Weblioより以下の文章。

このたびM社では人事部で営業も出来る人材を広く募集しております。

各部署は仕事上のつながりがありますため、やはりどちらも出来る人材が必要なのです。そこで○月○日に採用試験を行います。試験は5時間というハードなもので一般教養からマニアックな問題まで出題されます。出題範囲はとくに決まっておりません

受験希望者の方は○月○日までに履歴書をご持参、または郵送下さい。

これをGoogle翻訳にかけたのが以下の訳文。

We are currently recruiting widely the personnel who can do sales in the Human Resources Department at M Company.

Since each department has a business connection, we also need human resources who can do both. So I will do a recruitment examination on Monday, Monday. The exam is hard work of 5 hours and it will be presented from general education to maniac problems. The scope of the question is not particularly decided.

Applicants who wish to take the exam should bring their resume by Monday, Monday, or mail.

それでは、訳文のポイントを見ていきましょう。

人事部で営業も出来る人材

この部分の英訳は「personnel who can do sales in the Human Resources Department at M Company」。「M社の人事部に所属しつつ、営業もできる人材」という意味です。

出典ページの対訳を見ると「personnel who has ability of both Sales and HR」とあります。これだと「営業も人事もできる人材」という旨の文章。どうも微妙なニュアンスの違いがあります。

とはいえ「人事部に属しつつ」という点から、人事部の業務もこなしつつ営業もできる人材を探しているという解釈も十分可能です。こう解釈した場合、いずれの場合も大意はおなじことになります

行き先は同じでも道筋が違う、少しややこしい例ですね。

やはり

これは「also」と訳されていますが、この単語の意味は「~もまた」あるいは「~も同様に」というもの。

この場面で「also」を使うのであれば「前述の希望人材に加えて(ほかの条件の人材もほしい)」というような文脈で使うのが自然だと思われます。しかしここの部分は、どうして前述の条件で人材を募集しているかという補足をしている文面。

するとこの「やはり」は、「(~なので)やっぱり/どうしても」というニュアンスが強いはず。Google翻訳の出した「also」をそのまま訳語に意味がズレてしまいます。

このニュアンスを英語で表現するには「for sure」であったり、「indeed」、「it’s inevitable to~(~をせざるを得ない)」というような訳語が適当でしょうか

しかし出典ページの対訳を見ると、この「やはり」に相当するような単語はありません。あえて訳さず削っても問題ないのかもしれません。

マニアックな問題

訳語は「maniac」。外来語のようだからこれでいいのかどうかとなると少し考え物です。

日本語で言う「マニアック」は「ある事に極端に熱中しているさま」あるいは「特定の物事に異様に熱中し精通しているさま」という意味で使われています。

対して英語の「maniac」とは「熱狂的な、のめり込んだ」、あるいは「躁状態の人」という意味。「危険な方向に狂った人」という文脈で使われる場合も多く、どちらかというと単に「熱中する」ではなく、否定的なニュアンスも強い言葉といえるでしょう。

確かに日本語の意味と重なる部分はありますが、そうしたマイナスイメージを含む分ニュアンスも変わってしまいます。何よりも「マニアックな問題」の訳語を「maniac problem」としてしまうと、問題自体が何かにのめり込んでいるような印象になってしまいます

ここで言いたいことは「マニアックな人に向けた難問」ということであれば、「problems for ~」という表現の方が適切でしょう。そしてネガティブな含みのない「熱狂的な人」という言葉には「enthusiast」という英単語があるので、これを組み合わせた「problems for enthusiasts」という表現に変えた方がいいでしょう。「試験は5時間というハードなもので一般教養から、熱心な人向けの問題まで出題されます。」という入力文には「The exam is hard work of 5 hours, from general education to questions for enthusiasts will be presented.」という訳文が対応します。

決まっておりません

「not decided」とされていますが、これは違和感のある言葉の使い方です。

出題範囲が特に限定されないとに決まってはいるのですから、「not decided」と言えば矛盾を含む言い方になってしまいます。

出題範囲は「決定されていない」のではなく、「特に出題範囲を絞らないことに決定されている」わけのですから、ここで伝えるべきは「出題範囲を絞っていない」こと。別の単語をもってくる必要があります

「範囲を絞っていない」と言いたい場合の動詞は「decide」ではなく「specify」が望ましいでしょう。「出題範囲は特定されておりません。」と入力すれば「The scope of questions is not specified.」と出力され、比較的自然な表現になるはず。

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