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丁寧語を人間とは異なる捉え方をしているかもしれないGoogle翻訳

「お電話」や「ご教授」などの丁寧語につく「お」や「ご」の文字。ある種慣用的な表現なので、なんとなく読み流してしまいがちなポイントです。

ところがGoogle翻訳は、こうした丁寧語の表現を文脈理解に活用しているフシが見られます。実際どれほどのものかはわかりませんが、今回扱う文章とその訳文には、そのような傾向が見られました。

今回の原文はWeblioより、以下の文章。

このたびは、支店長とお会いできる機会をいただきましてありがとうございます。ブックフェアで得たトピックについて、彼と話し合えるとはうれしいです。

確認したいのですが、待ち合わせ時間と場所は3月14日の午後3時、会場の南ゲートでよろしかったでしょうか。

お電話でのご要望にあったように、携帯電話のアドレスと番号をお知らせいたします

これをGoogle翻訳で英訳したものがこちら。

Thank you very much for having the opportunity to meet with the branch manager. I am pleased to talk with him about the topics I got at the book fair.

I would like to confirm, but the meeting time and place was 3 o’clock in the afternoon of March 14, was it okay at the gate south of the hall?

As you requested by phone, we will inform you of the mobile phone’s address and number.

それでは、訳文のポイントを見ていきましょう。

機会をいただきまして

この箇所の訳文は「thank for having the opportunity」。「have opportunity(機会を得る)」と書けば「機会を得た」主体は自分です。そうなると手柄は自分のものなので、それについて誰かにお礼を言うのは不自然です。

誰に、何についてお礼を言っているのかちゃんと筋道が通るよう、「thank you for setting up the opportunity」という訳文を作って欲しいところ。これならば「機会を設けて頂いてありがとうございます」という意味になります。

この訳文のおかしなところは、日本語で「機会をいただきまして」といういかにも「give」になりそうな文面が「have」という動詞にされているところ。もらうという意味の「頂く」と解釈されたのでなければ、いったいどういう意味に変換されたのでしょうか

ともかくも、望みの訳文を出すのならば、一例として「お会いできる機会を設けて頂きましてありがとうございます。」という文章が考えられます。こうすれば先述の「set up」という動詞が使われるので、ちゃんと自然な文章ができあがります。

確認したいのですが

訳文は「I would like to confirm, but~」。以前の記事にもあった、「ですが」で「but」になる一例です。

以前にも書きましたがこうした場合の「ですが」には話題の前提確認、あるいは話題の転換という意味が強いため、接続詞では厳密に順接の意味となる「but」では都合が悪いのです。

出典ページにある対訳の例では「I would like to confirm that~」となっています。このように表記した方が自然なので、これが出力される表現を考えてみましょう。

一例として「待ち合わせ時間が3月14日の午後3時、場所が会場の南ゲートであることを確認させてください。」という入力が考えられます。これで訳文は「Please let me confirm that the meeting time is March 14th at 3 pm, the place is South Gate of the meeting place.」となります。

「Please let me confirm that~」で、「I would like to confirm that~」と同じ意味になるため、より自然な訳語ができあがります。

お電話でのご要望にあったように~

これは誤訳というよりも、主語の補い方がことのほかうまくできていた箇所です。

この文章には動作が2つあり、それぞれ動作の主体が異なります。1つめの「要望した」という動作の主体は相手方(=you)であり、2つめの「知らせる」主体はこちら(=I)です。日本語なら主語を省略しても差し支えはないのですが、主語を常に指定する英語に訳す場合は動作の主体をしっかり把握し、訳語に補ってやる必要があります。

主語が混乱した例は以前の記事にも何度か出てきましたが、この訳文は珍しく主語が適切に配置されています

その理由の一つとして、丁寧語の表現が関係性の判断に使われている、ということが考えられます。

試しに原文を「お電話でのご要望にあったように、携帯電話のアドレスと番号を知らせます。」と書き換えてみましょう。本来の文章と比べると「知らせる」が丁寧な表現ではなくなっています。すると「As it was requested by telephone, we will inform you of the mobile phone’s address and number.」という訳文が出てきます。「要望する」の主語が「you」から「it」に変わっており、「ご要望の通り」という意味はそのままに、要望した主体が明確にならない言い方に変わっているのです

さらに改変して、「電話で要望のあったように、携帯電話のアドレスと番号を知らせます。」にしてみましょう。今度は「要望」を普通の表現に直しています

すると出てくる訳文は「As requested by the phone, I will inform you of the mobile phone’s address and number.」。「要望のあった」という部分が「As requested by the phone」となっている点に注目です。これは「私に対して要請のあったように」というような、「I」を主語とした受動態の表現になっているのです。

その後出てくる「知らせる」という動作の主語が「we」から「I」になっているところも気にかかります。

ビジネスメールの表現では、こちらの動作の主語を「we」とする場合がほとんど。それが「I」に変えられたところを見ると、これは最早ビジネスメールとも認識されず、私信の一部であると解釈されているように思えます。

この例を見るに、丁寧語の表現として添えられる「お」や「ご」は、機械翻訳が日本語の文章を解釈する際の文脈認識に一定の貢献をしていると思われます。逆方向に考えていくと、話者と聞き手の関係性という文脈さえある程度わかれば、ある程度敬語表現の生成は自動化できるのではないでしょうか。

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